アナログ終了11年問題、廃棄TV1800万台も あふれるブラウン管
2008/11/11
ニュース
家電メーカーが家電リサイクルの「2011年問題」に戦々恐々としている。テレビ放送の完全デジタル化に向けブラウン管テレビの廃棄が急増。09年度からは薄型テレビ(液晶、プラズマ)も家電リサイクル法の対象に加わり、薄型テレビだけで11年に廃棄が100万台を超える。使用済みテレビの大量発生時代が刻一刻近づいている。
前門の虎と後門のオオカミ――。テレビリサイクルの前門の虎が処理能力の問題だ。電機業界が想定する使用済みテレビの廃棄量は11年時点で1100万台強。だがこの予測にはカウント外の数字がある。消費者が薄型テレビを買った後も手元に捨てないで残しているブラウン管テレビが廃棄される可能性だ。
11年はそれが643万台になるとの予測もある。この数字を足すと、現在の2倍近い約1800万台に廃棄量が膨らむ。現在のリサイクル工場の処理能力は計700万台程度のもよう。ギャップは深刻だ。
日立製作所系の関東エコリサイクル(栃木県大平町)の蓼沼博志社長は「二交代にして処理能力を増やす」と対応策を明かす。全国で二交代制にすれば1400万台を処理できる。マンパワーの投入で処理能力の問題にはメドがつくというのが電機業界の見方だ。
ただ、シフト増にも人件費や追加の設備投資などコストがかさむ。シャープ系の関西リサイクルシステムズ(大阪府枚方市)は第2工場建設に約10億円を投じた。
最初の関門をクリアしても、さらに深刻な問題が立ちはだかる。ガラスの再利用問題だ。
ガラスの製品重量比はブラウン管テレビで約6割、プラズマで約3割、液晶は6%。義務付けられたリサイクル率はブラウン管55%、薄型は09年度から50%、14年度にもガラスを含むパネル部分が対象に加って60%になる可能性がある。ガラスの「はめ込み先」確保がリサイクル全体の行方を左右する。
国内の家電リサイクル工場が処理したブラウン管テレビから07年度に発生した精製ガラスは約6万8000トン。マレーシアやインドに輸出され、ブラウン管ガラスに戻す「水平リサイクル」をしている。アジアの精製ブラウン管ガラス需要のうち日本の輸出品は現在1割程を占める。
だが、11年に向け国内で精製ガラスの発生量が急増するのに対し、ブラウン管用の需要はアジア諸国でも薄型テレビへの移行が進むため、大幅に減る。アジアだけで日本であふれかえるブラウン管ガラスの山を吸収するのは困難だ。
一方、薄型テレビのガラスも厄介な問題を抱える。同じテレビ用途で使い回しする「水平リサイクル」が難しいという問題だ。薄型テレビではパネルガラスが特殊仕様。「解体すれども用途なし」という袋小路に陥りかねない。
出典:日経速報ニュース