パナソニックなど出資のRITE、雑草から石化原料、米ダウと12年にも量産。
2008/10/18
ニュース
パナソニックや新日本製鉄などと政府が出資する地球環境産業技術研究機構(RITE)は米化学最大手のダウ・ケミカルと共同で、雑草や農産廃棄物から石油化学の基礎原料を量産する技術を実用化する。植物繊維から合成し、石油からつくるナフサ(粗製ガソリン)の代替品とする。原油や穀物の価格が乱高下するなか、価格変動の少ない非食料用植物を活用し、石化原料の安定供給につなげる。
雑草などの繊維からプロパノールと呼ぶアルコールを作る技術を実用化し、二〇一二年にも量産を始める。プロパノールを化学処理すれば基礎原料のプロピレンを合成でき、自動車の外装素材などに使う樹脂やアクリル繊維、インクなど幅広い化学製品の原料となる。
RITEは遺伝子を組み換えた微生物を使ってプロパノールを作るための基礎技術を開発しており、雑草一キログラムから二百―三百グラムのプロパノールを製造できるという。この技術を応用し、ダウとRITEが一〇年に米国で実証プラントを建設。一二年にもダウが中南米などで量産に乗り出す見通し。原油価格が一バレル六〇ドル以上ならコスト競争力があるという。
新技術で生産した石化原料は、原油依存度の引き下げに加え、二酸化炭素(CO2)の排出量削減にもつながる。石油から作る場合に比べCO2排出量を約三分の一に削減できる。
他の日米欧の企業、研究機関も農産廃棄物や廃材を使ってバイオ燃料や石化原料を作る試みに取り組んでいる。政府の試算では、アジアで非食用植物をすべて集めれば、日本の年間ガソリン消費量の四倍に当たる二億八千万キロリットルのエタノールが生産できる。
しかし農産廃棄物の発生量は季節による変動が大きい。安定生産するには、原料となる植物をいかに効率的に安く調達するかが課題になりそうだ。
▼プロパノール アルコールの一種で、これ自体が塗料などの溶剤や印刷用インク、繊維の原料になる。純度を高めたものは半導体の洗浄にも使う。プロピレンのほか、潤滑油に使うグリセリンなどに合成することができる。自然界でも微生物が植物などの有機物を分解する際に発生する。工業用には石油由来のナフサを原料に、三井化学やトクヤマなどが生産している。
出典:日本経済新聞