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エコナビ2008:家電リサイクル法施行8年目 プラスチック、再利用量13倍

2008/08/19

環境省

◇技術向上「処分」から「部品」へ
 家電リサイクル法施行から8年目。当初は焼却や埋め立て処分がほとんどだった使用済み家電のプラスチックだが、電機メーカーなどによる技術開発が進み、リサイクル量は07年度までの7年間で13倍に急増した。最近はリサイクル材を使った家電が増えるなど、メーカーも「リサイクル力」強化を競うようになり始めた。一方、法施行後も家電の不法投棄や横流しなどの問題は後を絶たず、リサイクルの抜け穴をふさぐ政府、産業界の抜本的な取り組みが求められている。【秋本裕子】

 千葉県市川市にある三菱電機子会社の家電リサイクル会社「ハイパーサイクルシステムズ」の本社工場。猛暑でエアコンや冷蔵庫の買い替え需要が増えた7月、使用済み家電の処理がピークを迎えていた。

 1階には三菱電機のほか、シャープや日立アプライアンス製の使用済み家電が山積みにされている。大きな部品は手作業で解体して金属とプラスチックに分け、プラスチックは種類ごとに細かく分別して破砕する。その後、材料メーカーや部品メーカーに運んで新しい部品に作り替え、再び三菱製の家電に使う。

 取引価格が高く分別しやすい金属類に対し、プラスチックは付着している異物の除去に手間がかかるうえ、品質が劣化しやすく再利用が難しい。だが最近、メーカーの技術革新が進み、再生して自社製品に使う例が増えている。

 三菱電機は06年、業界で初めて「リサイクル材100%」の部品を開発し、冷蔵庫や洗濯機に使用。ソニーは3月から、自社製ブラウン管テレビの背面カバーを、液晶テレビの背面カバーに再利用している。シャープは、高品質の再生プラスチック開発に成功し、07年度から洗濯機の底台や冷蔵庫の運搬取っ手に活用。液晶テレビ「アクオス」に再利用しやすい樹脂を使うなど将来のリサイクルを考えた製品設計にも力を入れている。

 こうした取り組みで、プラスチックのリサイクル量は01年度の4865トンから07年度には6万2503トンへ。金属類も加えると、材料の再利用率は66%から81%に伸びた。資源高による採算性向上も追い風だ。電機メーカーで作る家電製品協会は「ブランドイメージや競争力向上に、リサイクル技術強化が必須になりつつある」と説明する。

 ただメーカーには「リサイクル材使用が売れる要因になっていない」という悩みもある。シャープの隅田憲武グリーンプロダクト開発推進部長は「メーカーがリサイクル技術も競うことで、消費者の関心を高めていきたい」と「売れるリサイクル」への意欲を語った。

 ◇廃家電、半分引き取られず

 経済産業省や環境省によると、05年度に家庭などから排出された家電4品目は推計で2287万台。うち小売業者が引き取ったのは1720万台で、メーカーに渡ったのは約1162万台と全体の半分にとどまる。残りは中古市場への横流しやアジアへの輸出、不法投棄などにつながっている可能性が高い。

 両省は、不法投棄、横流し防止のため、(1)リサイクル料金を後払いから前払いに(2)使用済み家電の引き渡し先の記録、報告を小売店に義務付け--を検討。このうち、前払い式に対しては、メーカーや小売店が「実質的な値上がりにつながる」などと反対した。販売から廃棄までの所有履歴管理が難しい問題もあり、導入は見送られた。引き渡し先の報告については、来年度中にも実施の見通し。だが、大手量販店が軒並み、横流し問題などで是正勧告や厳重注意を受けている現状では、小売り現場で厳しいチェックが行われるかは不透明だ。

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 ■ことば

 ◇家電リサイクル法
 リサイクル推進と廃棄物減量のため、01年4月に施行された。消費者は運搬料と電機メーカーが定めるリサイクル料を小売店などに支払い、廃家電を引き取ってもらう。小売店はメーカーが管理する48カ所のリサイクル施設に運び、再利用される。対象はブラウン管テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機。来年度から薄型テレビと衣類乾燥機が加わる。資源価格の高騰を受け、主要メーカーは11月からリサイクル料を引き下げる。

毎日新聞 2008年8月19日 東京朝刊


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