【福岡県 トータルケア・システム】保育園の紙おむつ回収・再生で脱炭素を目指す
2022/01/11
ニュース
福岡県を中心に九州4県で、病院や福祉施設から出る紙おむつのリサイクルを手掛ける「トータルケア・システム」が、保育園での事業に乗り出すと発表した。
同社は使用済み紙おむつを建築資材の原料に再生する事業も行っており、資源の有効活用だけでなく、焼却処分に比べて二酸化炭素(CO2)排出量を4割減らすなど温暖化対策にもなっている。
紙おむつの需要度は年々増しており、回収対象を保育園にも広げ、脱炭素や資源循環型社会の具体化を目指す意向である。
「環境省リサイクル推進室」によると、保育園で回収した紙おむつのリサイクルは全国でも珍しいという。
国内の使用済み紙おむつは、大半が焼却処分されている。推計では2015年度の乳幼児用、大人用の焼却・埋め立て量は計約200万トンで、30年度には2~3割増える見通しが立てられている。
使用済み紙おむつは、し尿を大量に含んでいて燃えにくく、焼却時に重油など助燃剤を使うため、CO2排出量が増す。
また、いったん燃えだすと急激な温度上昇を招き、焼却炉を傷める原因にもなる。
国はリサイクルを後押ししようと、2020年にリサイクルや回収方法を紹介した自治体向けガイドラインを公表するなど、対応に乗り出している。
「トータルケア・システム」は2005年、福岡県大牟田市の工場でリサイクル事業を始めた。福岡、佐賀、熊本、鹿児島の各県の病院や介護施設約200カ所のほか、福岡県大木町とみやま市の一般家庭から出る使用済み紙おむつを年間で計約5千トン回収。
水と薬剤で分離させ、パルプやプラスチック、高吸水性樹脂などに分けて取り出している。パルプは、建材メーカーが外壁材や内装材の原料として買い取り、リサイクルされている。
一方、保育園の使用済み紙おむつについては、保護者に持ち帰ってもらったり園が引き取って処分したりするのが一般的という。
同社は分別回収など協力を得られる保育園もリサイクルの対象になると判断し、2021年12月上旬から、福岡市内の民間保育園でリサイクルの実証実験に着手しており、順次拡大する方針を示している。
リサイクルには回収費用と処理費用が必要になるが、長武志社長は「保護者の負担軽減は子育て支援になり、子どもの環境学習にもなる。行政にも協力を求めていきたい」としている。